7月26日、夏の甲子園出場をかけた神奈川県大会の決勝で、ダブルプレー(ゲッツー)の判定が「誤審」ではないかとして非難を浴びています。
この記事では、今回の判定の判断基準や、ダブルプレーでのショートの動きを解説します。
神奈川県大会で起きた問題の判定
この「誤審騒動」が起きたのは、7月26日の夏の甲子園出場が決まる神奈川県大会決勝戦です。横浜高校と慶應義塾高校が対戦したこの試合は、横浜高校が2点をリードして9回に入りました。
9回表が始まったときのスコアは以下の通りです。
学校 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
慶応 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | |
横浜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 1 | 0 | 5 |
問題が起こったのはこの9回表、慶應が1アウト1塁としている場面で起きました。以下が実際の映像です。
プレーの簡単な解説
- バッターが打った球はセカンドに転がる
- セカンドはダブルプレーを取るためセカンドベースのショートに送球
- ショートはベースに「触れ」ファーストに送球
1アウトでダブルプレー(ゲッツー)を狙うことができるため、セカンドはセカンドベースに送球しました。
ここでボールをもらったショートがベースに「触れていれば」ファーストランナーがアウトになる場面です。※踏む必要はありません。
ショートは、セカンドからのボールを捕球直後、右足でベースの角を足で擦るような動きをしています。
これに対し審判は、ショートの足がベースに「触れていない」としてセーフと判定しました。
この判定の後、慶應が横浜を逆転してしまいました。
学校名 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
慶応 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 6 |
横浜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 1 | 0 | 0 | 5 |
これが誤審あれば、勝者は横浜であった可能性が高いことから、このプレーは勝敗に大きく左右したと言えます。
ショートの動きの理由
このショートの「右足でベースの角を足で擦るような動き」は、間違いではありません。もちろん踏んだ方が審判からは判定しやすいのですが、足を擦るような動きが推奨されるのには次のような理由があります。
- ベースを踏んで滑ることによる怪我を防止するため
- ランナーとベース上で交錯するのを防ぐため
- 足を動かしながら動かしながらの捕球が可能なため、送球に素早く移れる(ダブルプレーの確率が上がる)
特に今回の場合は、一塁のアウトのタイミングもギリギリであったため、素早い送球は必須であったと言えます。
プロ野球におけるショートのプレイ
プロ野球の同じ形のダブルプレーの映像集がありました。
ショートは、よほど余裕があるときはベースを「踏んで」いますが、素早いプレーが要求されるときにはベースを「足で擦って」います。
この判定が誤審だと騒がれている理由
この判定が誤審ではないかとされる理由には、次のようなものがあります。
- そもそも足がベースに触れているように見える
- タイミングだけ見ると完全にアウトで、映像でも正解の判定がわからないほど微妙なのに、わざわざアウトにしない理由がない
- そもそもタイミングがアウトで、よほどプレーに問題がないならアウトにするべき(みなしアウトの考え方)
誤審とする判断基準でも、大きく意見が割れています。
特に最後の「みなしアウト」は、プロ野球では日常的に行われていて、怪我防止の観点から暗黙的に利用されています。
このような判定を防ぐにはどうしたらよいか
では、このような判定を防ぐにはどうしたら良いでしょうか?
審判・運営側目線では
- リプレイ検証を導入する
- 怪我防止のため、体勢が崩れていない今回のようなプレーでは、みなしアウトとして判定する
などが考えられます。しかし、リプレイ検証の導入にはコストがかかり、みなしアウトは判断基準が曖昧になってしまうなどの問題があります。
プレイヤーがこのような判定を防ぐには
- ベースをしっかり踏む
- ベースを強めに擦る(音でも審判に当たったことが伝わる)
などの対策があります。しかし、こちらも怪我のリスクが上がったり、ダブルプレーにする確率が下がってしまうなどのデメリットがあります。
まとめ
神奈川県大会決勝戦の誤審騒動について解説しました。
今回の騒動では審判へのバッシングなどもありましたが、個人に頼りすぎずに誤審を減らす取り組みが重要です。
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